【海外TOPIX】100年の歴史を残し、15階建てオフィスを新築|ベルリンで実現したSchücoのファサード技術

産業遺産を保存し、その内側に現代のオフィスビルを建設する。

ドイツ・ベルリンのシェーネベルク地区で、100年以上の歴史を持つ巨大なガスタンクが、現代のオフィス・イベント施設へと生まれ変わった。

「EUREF-Gasometer」と呼ばれるこのプロジェクトでは、歴史的な円筒形の鉄骨構造を保存・修復し、その内側に15階建ての新しい建物を建設。産業遺産の存在感と現代建築の透明性を共存させている。

この建築にはSchücoのファサード、窓、ドア、日射遮蔽システムが採用されており、その製品一覧には、日本国内でも製作される「Schüco FWS 50」が含まれている。

目次

都市の記憶を残すという選択

建築再生前のEUREF-Gasometer。歴史的な円筒形の鉄骨構造
オフィス建設前のEUREF-Gasometer。歴史的な鉄骨構造が都市のランドマークとして残されていた。写真:© Andreas Schwarz / EUREF AG

EUREF-Gasometerの歴史は、1908〜1910年にさかのぼる。

かつて都市ガスを貯蔵していた施設であり、最大約160,000m³の貯蔵能力を持っていた。円筒形の巨大な鉄骨構造は、ベルリンの産業発展を象徴するランドマークとして親しまれてきた。

施設としての役割を終えた後も、その鉄骨構造は残され、1994年には歴史的建造物として保護対象となった。

再開発に際して選ばれたのは、既存構造をすべて解体する方法ではなかった。

外周の歴史的鉄骨を保存・修復し、その内側に新しいオフィスビルを建設する。新旧の建築を物理的にも視覚的にも共存させるという、特徴的な計画が採用された。

歴史的鉄骨の内側に、新しい15階建ての建物を建設

歴史的な鉄骨構造の内部に新築オフィスを設けるEUREF-Gasometerの完成予想CG
歴史的鉄骨を保存し、その内側に新しい建物を設ける計画。完成予想CG:© EUREF-Consulting

この事例を正確に理解するうえで重要なのは、既存の建物をそのままオフィスへ改修したわけではないという点だ。

歴史的な鉄骨構造を残しながら、内部には15階建て、約35,000m²の利用可能面積を持つ新しい建物が建設された。

新設建物と既存鉄骨の間には約1mの距離を確保し、両者は構造的に独立している。

歴史的構造物はその独立性を保ち、新しい建物は現代のオフィスとして必要な機能を備える。両者の間に生まれる空間が、建築の新旧を際立たせている。

また、下部に残された鋼製外殻も保存され、会議・イベント機能を担う空間として活用された。

これは一般的なオフィスビルの外装改修ではなく、産業遺産の保存と新築建築を組み合わせた適応的再利用(Adaptive Reuse)の事例と捉えるのが適切だろう。

歴史的構造と対話する、現代のファサード

新しいオフィス棟には、既存の円筒形の構造に呼応する、ガラスを主体とした外装が採用された。

透明性を重視した外皮が、外側に残された歴史的な鉄骨を視覚的に引き立て、古い構造物と現代の建築が重なり合う独特の外観を生み出している。

この曲面を持つファサードの製作・施工には、高い精度が求められた。

Schüco公式の施工事例によれば、外装には特別に設計されたユニット式のファサード構造が採用され、工場でガラスや取付部材などを組み込む高いプレファブリケーション率によって、現場施工の効率化を図っている。

さらに、高さ70mを超える建築に作用する風荷重や、外付け日射遮蔽装置の荷重なども、重要な設計条件となった。

限られた施工空間において精度と施工性を両立させることは、ファサードエンジニアリングの大きな課題である。

採用システムの一つ、Schüco FWS 50

Schüco公式施工事例では、EUREF-Gasometerの採用製品として「Schüco FWS 50」が明記されている。

FWS 50は、方立と無目によってガラス面を構成する、基本見付け幅50mmのアルミファサードシステムだ。

設計上の自由度に加え、断熱性能、部材加工、組立、施工性に配慮したシステムとして、さまざまな建築用途に対応する。

特に、大面積のガラスファサードでは、意匠だけでなく、風荷重への対応、ガラス重量、気密・水密性能、躯体との取り合い、製作精度など、多岐にわたる検討が必要になる。

Schüco FWS 50は、こうした条件を統合してファサードを構築するためのシステムの一つである。

ただし、EUREF-Gasometerでは複数のSchücoシステムが採用されているため、特徴的な曲面ユニットファサードの全体がFWS 50のみで構成されていると解釈すべきではない。

プロジェクト全体のファサード技術と、個々の製品システムの適用範囲は区別して理解する必要がある。

世界で採用されるSchücoのファサード技術を、日本の千葉でも製作

Schüco FWS 50は、欧州の建築プロジェクトだけに用いられるシステムではない。

日本国内でもSchücoの認定製作体制が整備されており、千葉県柏市の柏テクニカルセンターでは、Schüco FWS 50をはじめとするアルミファサードシステムの製作に取り組んでいる。

欧州で培われたシステム技術を、日本国内での設計、加工、組立、施工条件に対応させることは、ファサードの選択肢を広げるうえで重要な意味を持つ。

特にファサードは、材料を調達するだけでは成立しない。設計図書との整合、形材の精密加工、部品構成、製作精度、品質管理、現場施工との連携まで、一連の技術的な調整が不可欠となる。

国内に製作拠点が存在することは、日本の建築家、設計事務所、ゼネコン、デベロッパーにとって、Schücoのファサードシステムを具体的に検討するための基盤となる。

保存と新築が共存する空間体験

EUREF-Gasometerのスカイラウンジ完成予想CG。曲面ガラスと歴史的鉄骨
スカイラウンジの完成予想CG。ガラスの外側に歴史的な鉄骨が見える構成が特徴的。© EUREF-Consulting GmbH

歴史的な鉄骨構造を残すという判断は、単に過去の姿を保存するためだけのものではない。

ガラス越しに古い鉄骨が見える空間は、新築だけでは得られない体験を生み出している。

新しい建物の最上部にはスカイラウンジやテラスが設けられ、ベルリン市街を望む空間が計画された。

歴史的な構造物が、外観を特徴づけるだけでなく、現代の建築空間そのものの価値を高める存在になっている。

建物を残す価値を、どう判断するか

EUREF-Gasometerから日本の建築に対して読み取れるのは、単純に「建替えより改修が優れている」という結論ではない。

実際、このプロジェクトでは、歴史的な構造物を保存する一方で、その内部に大規模な新築建物を設けている。

つまり、保存すべき部分と新しく建設すべき部分を明確に分けることで、都市の歴史と現在の事業ニーズを両立させた事例である。

日本でも、既存建築の更新に際しては、建替え、躯体の継続利用、外装更新、用途変更、部分保存など、複数の選択肢を比較する必要がある。

その判断には、耐震性能、建築基準法への適合、経済合理性、既存構造の状態、将来用途、環境負荷などの検証が不可欠となる。

特に外装は、建物の印象だけでなく、断熱、日射、採光、室内環境にも関わる。

Schücoのような高性能ファサード技術は、新築建築においても既存建築の更新においても、設計者が検討できる選択肢を広げる。

歴史を消すのではなく、未来の建築に組み込む

夜間にライトアップされたEUREF-Gasometerの完成予想CG
既存鉄骨と新しい建築の共存を描いた夜景完成予想CG。© EUREF-Consulting

都市に残された建築物の価値は、その建築年数だけで決まるものではない。

歴史的な意味を持つ構造物を保存しながら、新しい技術と用途を組み合わせることで、建物には別の可能性が生まれる。

EUREF-Gasometerは、建築の保存と新築を対立する概念として捉えるのではなく、両者を一つの計画に統合した事例といえる。

そして、その新しい建築の外皮を成立させるために、高精度なファサード製作・施工技術が活用されている。

何を残し、何を新しくするのか。その判断こそが、これからの建築に問われている。

Schücoのファサードシステムを詳しく知る

Schüco FWS 50をはじめとするファサードシステムの製品情報や技術資料をご希望の方は、下記の資料ダウンロードページをご利用ください。

建築家、設計事務所、建設会社、デベロッパーの皆様の設計・製品検討にお役立ていただけます。

Schüco製品カタログ・資料ダウンロード →


PROJECT DATA

  • プロジェクト名称:EUREF-Gasometer
  • 所在地:ドイツ・ベルリン、シェーネベルク
  • 既存ガスタンク建設:1908〜1910年
  • 歴史的建造物指定:1994年
  • 新設オフィス部分:15階建て
  • 利用可能面積:約35,000m²
  • Schüco公式施工事例の完成年:2023年
  • 設計:EUREF-Consulting Gesellschaft von Architekten und Ingenieuren
  • ファサード専門施工会社:FKN Fassaden
  • Schüco採用システム:FWS 50、ADS 75 HD.HI、AWS 75.SI+、AD UP 75、AWS 65 BS、CTB on AWS、AF UDC 80 ほか
  • 建築の特徴:歴史的鉄骨構造の保存・修復と、内部への新築オフィス棟の挿入

参考資料:Schüco公式施工事例「EUREF-Gasometer」、EUREF AG公式建築・プレス資料。本記事は公開情報に基づく独自編集記事です。

この記事を書いた人

Aikawaのアバター Aikawa (株)相川スリーエフ  代表取締役会長CEO

新日軽(現LIXIL)船橋カレッジでビルサッシ技術を基礎から徹底的に習得し、施工・品質管理・現場調整まで一連の工程を実務で経験。

1947年創業の相川スリーエフ三代目として、建材から建築へと事業領域を拡大。
現在はドイツSchüco製品の国内展開を牽引し、設計事務所・ディベロッパー向けの技術支援体制を直轄で統括している。

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