【海外建築事例】ドイツ・シュトゥットガルト「Z2」|既存オフィスビルを再生する次世代BIPVファサード

ARCHITECTURE / ADAPTIVE REUSE / BIPV

曲面ファサードが発電する。Schücoが示すオフィスビル再生の新たな可能性

既存躯体を活かし、建築デザインとBIPVを融合。ドイツ・シュトゥットガルト「Z2」の先進的リノベーション。

Z2オフィスビル外観
Z2 オフィスビル。Photo: © Achim Birnbaum / Schüco International KG

老朽化したオフィスビルの将来を考えるとき、選択肢は建替えだけではない。

既存の構造体を残しながら、外装の環境性能とデザインを再構築する。その可能性を示すのが、ドイツ・シュトゥットガルトのオフィスビル「Z2(Z-zwo)」だ。

建設会社Ed. Züblin AGのキャンパスに建つ6階建てのZ2は、2002年に設計された建物。改修では既存躯体や階段室を活用しながら、ファサード、設備、内部空間を刷新した。

最大の特徴は、曲面を持つ外装にBIPV(Building-Integrated Photovoltaics:建材一体型太陽光発電)を組み込んだこと。外装そのものがエネルギーを生み出す、新しいファサードのあり方を提示している。

目次

既存建築を、次の時代へ

建築の脱炭素化を考えるうえで、既存ストックの活用は重要な課題となっている。

建替えによって最新性能を獲得する方法に対し、Z2では建物の骨格を維持し、外皮と設備を刷新することで、新たな利用価値を生み出した。

計画にはジェネレーティブデザインの手法も活用され、自然光、空調負荷、外装構成などを総合的に検討している。

ファサードを単なる外観仕上げではなく、建築の環境性能や運用価値を決定づける設計要素として位置づけた点が特徴的だ。

曲面に追従するBIPV。発電設備を建築表現へ

太陽光発電は屋根上に設置する設備として捉えられることが多い。しかしZ2では、外壁の水平帯や手すり状の部位にBIPVを組み込み、ファサード自体を発電面として活用した。

特筆すべきは、建物の外形が直線だけではなく、凸曲面と凹曲面によって構成されていることだ。

曲面BIPVファサード
曲面ファサードとBIPV。Photo: © Achim Birnbaum / Schüco International KG

Schücoの公式施工事例によれば、凸曲面に用いるモジュールは工場で熱を利用して成形。一方、凹曲面の部材は現場でフレームに応力を与えながら取り付けた。

既存建物の複雑な形状に対応するためには、設計、製作、施工の高度な連携が不可欠となる。

公式資料では、ファサード部分に約350枚、定格出力107kWpのPVモジュールを採用。さらにPVフェンス29.1kWpを組み合わせ、合計約136.1kWpの設備容量を実現している。

ただし、この数値は設備の定格出力であり、年間発電量やエネルギー自給率を意味するものではない。

ファサードが不動産の資産価値を変える

既存オフィスビルの競争力を左右する要素は、立地や延床面積だけではない。

エネルギー効率、室内環境、外観デザイン、環境認証、そして働く場所としての魅力などが、不動産の長期的な競争力に影響する。

Z2の改修では、外装だけでなく執務空間や建築設備も刷新。約450席のワークスペースが整備され、建物全体の利用価値向上を図った。

Schücoの公式施工事例では、改修後の建物についてDGNBプラチナおよびQNG Premiumの認証取得が紹介されている。

改修後のオフィスビル外観
改修後のファサード。Photo: © Achim Birnbaum / Schüco International KG
Z2改修後の内部空間
自然光を取り込む内部空間。Photo: © Achim Birnbaum / Schüco International KG

日本の建築家・デベロッパーへの示唆

建替えと改修を、ライフサイクル全体で比較する

既存構造体の継続利用は、新築に伴う資材投入や解体廃棄物を抑制できる可能性がある。一方で、改修費用、設備更新、耐震性能、運用エネルギーなども含め、個別の建物ごとに評価する必要がある。

外装更新を、総合的な建築価値の向上へ

断熱、採光、日射制御、発電、外観刷新を一体的に設計することで、ファサードは建物の資産価値を再定義する重要な領域となる。

構想段階から専門家が協働する

曲面BIPVでは、支持構造、止水、熱変形、配線、維持管理、電気設備などの検討が必要となる。建築家、設備設計者、ファサードエンジニア、ファブリケーターの協働が実現性を左右する。

建築の未来をつくるのは、新築だけではない。

Z2は、既存建築の個性と構造体を継承しながら、外装を通じて環境性能と建築表現を更新した、示唆に富むプロジェクトである。

プロジェクト概要

建物名 Z2(Z-zwo)
所在地 ドイツ・シュトゥットガルト
建物用途 オフィス
規模 地上6階
改修竣工 2024年
主な特徴 既存建築再生、曲面BIPVファサード、環境性能向上

出典・写真について

本記事はSchüco International KGの公式施工事例および2026年1月20日付プレス資料に基づき、日本語で独自に編集したものです。

写真:© Achim Birnbaum / Schüco International KG

画像はSchüco公式サイトのURLを参照しています。転載および編集利用にあたっては、対象画像の利用条件とクレジット指定を遵守してください。

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この記事を書いた人

Aikawaのアバター Aikawa (株)相川スリーエフ  代表取締役会長CEO

新日軽(現LIXIL)船橋カレッジでビルサッシ技術を基礎から徹底的に習得し、施工・品質管理・現場調整まで一連の工程を実務で経験。

1947年創業の相川スリーエフ三代目として、建材から建築へと事業領域を拡大。
現在はドイツSchüco製品の国内展開を牽引し、設計事務所・ディベロッパー向けの技術支援体制を直轄で統括している。

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