古くなったRCビルを前にしたとき、
私たちはつい「壊して、新しく建てる」ことから考えてしまいます。
しかし欧州では、違う選択肢が現実の建築として増えています。
まだ使える構造体は残す。
そして、その外側に新しい性能とデザインを与える。
建物に「新しい外皮」を着せる。
その考え方を象徴する事例が、
フランス西部Saint-Brieuc(サン=ブリユー)で再生された
旧EDF-GDFオフィスタワー
「Le Belvédère(ル・ベルヴェデール)」
です。
Le Belvédère(Saint-Brieuc, France)。
既存RC構造を活用して再生されたオフィス建築。
Photo credit: © Macareux Productions
解体ではなく、既存RCを残す
Le Belvédèreは、約33,000㎡の旧産業用地を再生する
「Renaissance」プロジェクトの一部として計画されました。
このプロジェクトで特に興味深いのは、
古いオフィスタワーをすべて取り壊さなかったことです。
設計チームは、
既存のRC構造体を保存。
そのうえで新しい外皮を構築しました。
新しいファサードには、
木造フレーム、断熱材、そして外付けの日射遮蔽が組み合わされています。
つまり、
構造体そのものを捨てるのではなく、
建物の外皮を更新することで性能と外観を再構築した
わけです。
ファサードは「飾り」ではない
Le Belvédèreの外観を最も特徴づけているのが、
建物の外周を覆う多数の縦型フィンです。
外壁を覆う縦型ブリーズソレイユ。
日射遮蔽装置そのものが建築デザインの一部となっている。
Photo credit: © Macareux Productions
採用されているのはDUCOの外付け日射遮蔽システムです。
上層階には縦型の
DucoSun Cubic 300、
低層部との境界には水平型の
DucoSun 100C
が採用されています。
これらは単なる装飾ではありません。
強い日射をガラス面へ到達する前に外側で遮りながら、
室内には自然光を取り込む。
「明るさを確保しながら、熱をコントロールする」
ための建築装置でもあります。
窓の外側に配置された縦型フィン。
日射遮蔽と外観デザインを一体化していることが分かる。
Photo credit: © Macareux Productions
ファサードが、建物の表情を変える
外付けフィンのもう一つの役割が、
建物そのものの表情をつくることです。
太陽の位置や見る角度によって、
光と影のパターンが変化します。
性能のために必要な設備を隠すのではなく、
むしろそれを建築のデザインとして見せる。
これは、欧州のファサード設計を見ていると
非常によく現れる考え方です。
見上げた角度から見るLe Belvédère。
光と影によってファサードの表情が大きく変化する。
Photo credit: © Macareux Productions
解体されたコンクリートも、捨てない
このプロジェクトの考え方は、
建物本体を残すことだけではありません。
サイト内で解体されたコンクリートは破砕され、
道路の路盤・下地材として再利用されました。
公開資料によれば、
解体されたコンクリートの
約90%が道路の路盤材などとして再利用されています。
「解体して捨て、新しくつくる」という一方向の建築から、
既存ストックを次の価値へつなげる建築へ。
Le Belvédèreは、その考え方を非常に分かりやすく示しています。
窓だけではなく、「外皮全体」を考える
建物の省エネルギー改修というと、
「高性能な窓へ交換する」という話になりがちです。
もちろん、窓の高性能化は極めて重要です。
しかし本来、建物の外皮は
窓だけで成立しているわけではありません。
窓、ガラス、断熱、気密、防水、日射遮蔽、外装。
それらを一体として考えることで、
建物の温熱性能とデザインは大きく変わります。
Schücoも「新築だけ」を見ていない
ここで興味深いのが、
Schücoが近年、既存建築の再生を重要な市場として位置づけていることです。
Schücoでは既存建築の改修について、
Schüco Value Up
という考え方を展開しています。
建物を調査し、
改修可能性を分析し、
ファサードを計画し、
施工し、
その後も維持管理していく。
そのプロセスは、
Analyse → Plan → Rebuild → Maintain
の4段階で整理されています。
Schücoが見ているのは、
単なる「サッシ交換」ではありません。
建物外皮そのものを再構築し、
既存建築の価値をもう一度高める。
その考え方です。
日本の築古RCにも、同じ問いがある
日本にも、昭和から平成初期に建設された
RC・SRC造のオフィス、店舗、集合住宅が大量に残っています。
立地は悪くない。
構造体も、まだ使える。
それでも、
古いアルミサッシ、
単板ガラス、
断熱性能の低い外壁、
古く見える外装によって、
建物全体の価値まで低く評価されてしまう。
そんな建物は少なくありません。
それとも、「外皮」なのか。
もし構造体が健全であるなら、
高性能窓、断熱、日射遮蔽、金属ファサードなどを組み合わせ、
建物の外皮を再構築するという選択肢があります。
築30年、40年、50年という数字だけで
建物の価値を判断する必要はないのかもしれません。
「建て替える」から「アップデートする」へ
Le Belvédèreが示しているのは、
「古い建物を大切にしましょう」という
情緒的な話だけではありません。
すでに存在しているRC躯体は、
莫大な材料とエネルギーを使ってつくられた
建築資産でもあります。
それをすべて壊して、
もう一度コンクリートを打ち、
もう一度鉄を使う。
その前に、
「残せるものは残し、
性能だけを現代へ引き上げることはできないか」
と考えてみる。
建物を壊さない。
外皮を、もう一度つくる。
古いRCを「解体対象」として見るのではなく、
次の時代へ引き継ぐ構造資産として見る。
欧州で進む既存建築再生の考え方は、
日本に大量に残る築古RCビルの未来を考えるうえでも、
大きなヒントになるのではないでしょうか。
L’Echo de la Baie
“Le Belvédère conjugue réhabilitation bas-carbone et protection solaire architecturale”
Published 23 September 2026
DUCO / Le Belvédère project information
Schüco International KG
“Schüco Value Up / Adaptive Reuse”
※Le BelvédèreはSchüco製品の施工事例として紹介するものではありません。
本記事では、欧州における既存RC建築再生と
ファサード更新の考え方を紹介する事例として掲載しています。
※Photo credit: © Macareux Productions
