ドイツSchücoの窓は断熱性能が圧倒的に違う。日本と欧州の窓、それぞれの変遷について

ドイツの窓、日本の窓――断熱性能から読むサッシの歴史

欧州の方々が日本の住宅で生活すると、必ずと言っても良い。「寒い・暑い」と悩む。住宅そのものの断熱性能の基準が違うのだが、その中でも「窓」が大きく違う。最近となりようやく日本の窓も断熱性能が高まった。しかし、なぜここまで差が開いたのだろうか。少し深掘りしてみたい。 

同じ「サッシ」でも、出発点が違えば、進化の方向も違う。気候・文化・制度がつくった“窓の思想”を、断熱とアルミを軸に横並びで整理する。

ドイツ(欧州)と日本は、住宅の主課題が異なる環境で発展してきた。欧州では寒さと暖房効率が“生存の条件”に近いテーマとなり、窓は早い段階から断熱・気密を担う装置として磨かれてきた。
一方、日本は高温多湿と通風の文化の中で、窓は「開く」ことを前提に発展し、戦後の量産期にアルミサッシが一気に標準化した。


Schüco AWS 75.SI+(アルミ断熱システム)断面イメージ
Schüco(製品ページへリンク):アルミでも断熱を成立させるための構造思想(サーマルブレイク等)の代表例。

LIXIL サーモスⅡ-H/L 施工イメージ
LIXIL(商品ページへリンク):日本の標準高性能窓が目指す“暮らしへのフィット”と断熱・意匠の両立。
目次

1. 出発点の違いが、窓の進化を決めた

視点 ドイツ(欧州) 日本
気候 厳冬が長く、暖房の稼働が常態。窓は熱損失の最大要因になりやすい。 高温多湿の夏が強い。生活上の優先は通風・日射遮蔽・雨仕舞い。
住宅の敵 寒さ・熱損失(=暖房効率、健康、生活コスト)。 蒸し暑さ・湿気(=カビ、結露、体感不快)。
窓の役割 「閉じて快適」=断熱・気密・遮音・耐候を数値で満たす装置。 「開けて心地よい」=通風・採光・開放感を最大化する装置。
標準の思想 開き窓系を中心に、気密を確保しながら換気・日射・湿度を制御。 引き違いを中心に、日常の開閉と可変性を重視して最適化。

2. 伝統的な窓の姿を並べると、最初から“違う設計問題”だった

ドイツ(欧州)

二重窓・空気層という「断熱の発想」

木製窓が中心だった時代でも、寒冷地では外窓+内窓の二重構成(空気層)で熱損失を抑える発想が根付いた。
ガラスが単板でも「空気を挟む」ことで性能を稼ぐ考え方が早くから浸透した。

  • 閉じたときの隙間を減らす工夫(気密的発想)
  • 窓が弱点である前提で、壁・屋根と同じく“性能部位”として扱う
日本

障子・建具文化という「通風と可変性」

風を通し、湿気を逃し、季節で住まい方を変える。窓は空間の境界というより、環境とつながるインターフェースとして発達した。
その延長に、引き違いの合理性(開閉の軽さ・連続性)がある。

  • 閉じ切るより“開ける前提”の快適設計
  • 気密・断熱は生活上の必須条件になりにくかった

3. アルミサッシが登場した瞬間、日独は決定的に分岐した

ドイツ(欧州)

アルミは「断熱前提」でしか成立しない

アルミは熱を通しやすい。寒冷地では、そのままでは居住性能を満たせないため、サーマルブレイクなどの断熱構造が早い段階から不可欠だった。
つまり「アルミ化」と「断熱化」がセットで進む。

参考:Schüco製品断面(上部画像)/製品情報はリンク先で確認できる。

日本

アルミは「量産と耐久の正解」だった

戦後の住宅大量供給期、アルミは軽く、腐らず、均一品質で大量生産できる“決定打”になった。
一方で、当時の生活は局所暖房が中心で、エネルギーも相対的に安く、断熱性能は社会的な必須条件になりにくかった。
その結果、単板ガラス+アルミが長く標準化した。

4. 1970〜1990年代の“標準”を同じ物差しで比べる

項目 ドイツ(欧州) 日本
ガラス 複層化が進み、地域や用途によって三層も視野に入る。 単板が主流の期間が長い。複層は「高性能・オプション」になりやすかった。1970年頃はまだ和障子が玄関引戸という住宅も残っていた。硝子どころか紙だった。夜や雨の日は木製の雨戸を閉めていた。
気密 断熱とセットで管理され、施工精度も含めて“性能”として扱われる。 引き違い文化と相まって、気密は重視されにくく、後から強化されていく。
結露の扱い 欠陥・性能不足として対策する前提。 生活現象として受容されやすく、根本対策の優先度が上がりにくかった。しかし住宅そのものが隙間だ多く、アルミサッシも隙間風が多いため、結露しないというおかしな現象が生まれていた。
アルミの位置づけ 断熱構造を前提に、外皮システムとして高度化。 量産住宅の標準建材として普及し、断熱は後追いで強化。

5. 国の基準が“先行した地域”と“後追いになった地域”


Schüco 採用事例(外皮・開口部の更新イメージ)
Schüco(事例ページへリンク):海風や強風など厳しい環境条件に対して、外皮(窓・スライディング等)を“長期性能部位”として設計する発想。

LIXIL 高性能窓 住宅イメージ
LIXIL(商品ページへリンク):日本の住宅文脈(開放感・採光・インテリア)。

欧州では、暖房効率はエネルギー政策・都市の住宅政策と直結し、窓は「建物の弱点」ではなく「性能を成立させる核心部位」として扱われてきた。
結果として、断熱・気密は設計と施工の共通言語になり、製品も施工も制度も同じ方向を向く。

一方、日本は長く「夏の暮らし」と「通風の文化」に最適化してきた。
戦後の量産・復興期にアルミサッシが標準化したこと自体は合理的だったが、社会が求めたのはまず供給量と耐久性であり、
断熱・気密は“必須条件”になりにくかった。制度・市場・生活習慣の前提が違えば、窓の進化の速度と方向が違うのは自然である。当社は国内ではめずらしい企業で、Schüco/シューコーの代理店とLIXIL/リクシルの代理店を担当しており、自社工場で製作をしている。シューコーの窓を提案、積算、設計、製作、施工、施工管理まで任せられる企業は限られている。当社の担当エリアは関東全域。

6. いま、日本で「断熱窓」が主役になった理由

近年、日本の前提条件は大きく変化した。エネルギーコスト、健康(室温差による身体負荷)、住宅の長寿命化、そして快適性の期待値。
これらが同時に高まると、窓は「最後に手を付ける場所」ではなく、「最初に押さえる性能部位」になる。

ここで重要なのは、欧州の答えをそのまま移植するのではなく、住文化と気候に合わせて“翻訳”することだ。
開放性や景色の取り込み、引き違いの生活文化を尊重しながら、閉じたときの熱・音・空気を制御する――
その両立が、これからの日本の窓の進化を決める。

7. 断熱を語るとき、アルミを一括りにしない

「アルミは寒い」という印象は、単純な材料特性から来る。しかし実際の居住性能は、素材単体ではなく構造で決まる。
欧州で成熟したアルミシステムは、断熱構造(サーマルブレイク等)とガラス構成、気密・排水設計、施工精度まで含めて性能を作り込む。
日本でも同様に、アルミ単体ではなく“システムとしての窓”で評価する視点が不可欠になる。今の日本ではオール樹脂の窓を当たり前に採用しているが、いづれなくなると考えられる。実は欧州でも樹脂窓があり一時は流行した。しかし今はアルミに戻っている。理由は3つある。1つは、樹脂はリサイクルができない。正しくはリサイクルは可能だがリサイクルにかかるコストが高いため処分される。それが環境に悪影響を及ぼすことが問題になったから。もう一つは耐久性だ。紫外線にさらされる過酷な状態で何十年も耐えきれないことが分かった。やはりアルミサッシが最適であると気づいたのだ。最後の理由はデザインや見た目の美しさである。アルミという素材はやはり高級感はある。部材の構造を研究した結果、樹脂を上回る断熱性能が出れば、当然にアルミサッシが選ばれる。ただ、樹脂窓と比較するとアルミサッシは高級窓となり価格も高くなる。どちらを選ぶかはユーザの考え方である。

まとめ:同じサッシでも、設計問題が違えば進化は違う

  • 欧州の窓は、寒冷地の現実から「閉じて快適」を最初から追求してきた。
  • 日本の窓は、通風と可変性を中心に「開けて心地よい」を磨いてきた。
  • アルミサッシは、欧州では断熱前提、日本では量産・耐久の正解として普及し、断熱は後追いで強化された。
  • いまは前提条件が変わり、窓は住宅性能と暮らしの質を左右する主役になっている。

画像出典:各画像はリンク先のSchüco/LIXIL公式ページに遷移します。

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この記事を書いた人

Aikawaのアバター Aikawa (株)相川スリーエフ  代表取締役会長CEO

新日軽(現LIXIL)船橋カレッジでビルサッシ技術を基礎から徹底的に習得し、施工・品質管理・現場調整まで一連の工程を実務で経験。

1947年創業の相川スリーエフ三代目として、建材から建築へと事業領域を拡大。
現在はドイツSchüco製品の国内展開を牽引し、設計事務所・ディベロッパー向けの技術支援体制を直轄で統括している。

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